盲導犬ってなあに?





グッドの喜び
盲導犬候補となる子犬は1歳を過ぎると、盲導犬になるために訓練センターで基本動作を学びます。日本語は男性や女性、住んでいる場所によって言葉遣いが違うので「シット(お座り)」などのように、英語で覚えていきます。
訓練士が伝えたい大切な言葉の中に、「グッド」という褒め言葉があります。盲導犬はグッドと褒めてもらうことがとてもうれしく、様々な訓練を通して正しい動きを「グッド」という言葉を頼りに判断しながら成長していきます。
提供:KSB瀬戸内海放送


子犬はみんな、こあくまちゃん?!

犬は私たちヒトと同じように、知らない場所では緊張したり、人見知りをしたりします。
 生後4か月ぐらいのラブラドール・レトリーバーの子犬を預かったときのこと。初めて私の家に入ると、いたる所のにおいをかいで入念にチェック。それが終わると、すとんっと伏せて私を見つめてきます。「なぁに?」と話しかけながら近づくとしっぽをぶんぶん振って大歓迎。そしてなでてなでてとひっくり返ってお腹を出しました。しばらく触れ合いをしたあと、台所で晩ご飯の用意をはじめました。子犬は台所入口に設置した柵のぎりぎりまでよってきて、ちょこんと座ってじっとこちらを見ていました。その日は終始こんな感じでおとなしくて、盲導犬候補の子犬を預かったのは初めてだったのですが、「さすが!」と感心しました。
 ところが3日目、家に帰ってしばらくすると、子犬はタオルをかんで振り回したり、私が履いてる靴下をかんで引っ張ったり、目に入ったものをぱくっと口に入れたり、あっちこっち動き回り、目が離せない状態にでした。「数日経って慣れてくると、小悪魔に変身しますよ」という子犬担当スタッフの言葉が鮮明に頭に浮かびました。「これかぁ」子育て(子犬育て?)の洗礼を受けました。よく考えたらそりゃそうです、知らない人と知らない家へ来て、しばらく様子をうかがうのは普通のことです。慣れてきたところで、やんちゃぶりを発揮したまでのこと。
 それ以降わたしは、子犬が口にくわえたものを離させ、かじってもいいオモチャを目の前で誘うように動かし、かぷっと上手にくわえたら体をなでて褒める、という動作を何度となく繰り返すこととなりました。そうかと思うと子犬はぱたっと寝てしまい、私はその愛らしい寝顔を見て、さっきまでの苦労をすっかり忘れて、子犬にメロメロになっていました。
 盲導犬候補の子犬は、生後2か月から1歳になるまで、パピーウォーカーというボランティアにお預けします。いちばんかわいい時期だけど、いちばん手のかかる時期。パピーウォーカーの苦労と喜びを身をもって体験し、これを10ヶ月間続けてくださっているパピーウォーカーの皆さんに改めて感謝の気持ちでいっぱいになりました。

月に一度のしつけ教室

日本盲導犬協会では、パピーウォーカーに毎月1回訓練センターに集まってもらってパピーレクチャーをしています。いわばしつけ教室のようなもので、一緒に生活するうえで必要なしつけの方法を指導したり、お悩み相談を受けたりします。またパピーウォーカーの皆さんの交流の場でもあり、兄弟犬が集まるので楽しみにしてくださってる方も多いようです。レクチャーのときに健康チェックやワクチンの注射を打ったり、爪切りなどもします。

パピーウォーカーの重要任務は、子犬に愛情を注ぐこと!

パピーウォーカーの家族全員から愛されて育った子犬たちは、人が大好きになります。そして人といると安心できる犬になります。盲導犬たちがひとなつっこくて人間好きなのは、パピーウォーカーの愛情のおかげなんです。パピーウォーカーのお仕事で何よりいちばん重要なのは、子犬に愛情をたーっぷり注ぐことなんですね。

濃密な10ヶ月間

パピーウォーカーから、「自分の育てた犬が目の不自由な方を安全に誘導しているのを見て、達成感を感じた」、「子犬を育てたことで家族の絆がこんなに深まると思わなかった」、「夫の帰りが早くなった」、など感想をいただくことがあります。犬が苦手なお父さんが犬好きのお母さんに押されて10ヶ月間だけなら、と思ってパピーウォーカーを始めたら、お父さんの方がはまってしまい転職までしてしまった、という方もいらっしゃいます。犬にはヒトの心に響く、見えない不思議なチカラがあるのかもしれません。子犬は1歳になったら訓練センターに戻ってくるので、パピーウォーカーには犬との別れが必ずあります。さみしさもあると思いますが、それ以上に大きなものを得ていらっしゃるようです。ベテランのパピーウォーカーの中には、今迄に11頭目の子犬を育ててくださった家族がいらっしゃいます。パピーウォーカーを続けてしてくださる方がたくさんいらっしゃいます。
 犬たちは、愛情をたくさんくれたパピーウォーカーのことを忘れません。何年たっていても再会すると、目を輝かせ、腰からしっぽからブンブンブンブン振り、体全体で嬉しさを表現します。犬にとってもパピーウォーカーは特別な存在のようです。



さて、前回コラムの頭数あてクイズ…
答えは、 9頭 でした。
当たりましたか?

掲載日:2008年10月6日