第15回 スピルバーグのいる時代
最初の「激突」!?
自他共に認める映画ファンの僕であるが、一人の映画監督の劇場公開作を「すべて1本残らず、封切り当時に映画館で見ている」という体験はなかなかできるものではない。新人監督ならいざ知らず、何十年ものキャリアを重ねたベテラン監督ならなおさらのことである。その数少ない映画監督の一人がスティーブン・スピルバーグだ。
 初めての出会いは彼のテレビドラマ作品「激突!」。そのあまりの出来の良さから日本では劇場公開されたという伝説の作品だが、大学生当時、いっぱしの映画マニアを気取っていた僕の前に現れたスピルバーグのこの作品にはまさに圧倒されたものである。荒野の一本道で意味もわからないまま大型トレーラーに狙われるドライバーの恐怖と、モンスターのごとく追いすがってくるそのスピード感と迫力。単なるカーアクションでなく、人間の闘争本能とか無機質なものの意思とかといった哲学的な考えまで呼び起こしてくれる大傑作!これが僕とスピルバーグ監督との初めての出会いだった。その時から僕が彼の作品の大ファンとなった事はいうまでもない。

激突!
激突!


娯楽か芸術かという永遠の問題

JAWS
JAWS

E.T.
E.T.

ターミナル
ターミナル

「JAWS」「未知との遭遇」「E.T.」などその頃の彼の作品は、大ヒットはしてもアカデミー賞や芸術的評価からはほど遠いところに位置していたが、僕は、そんな権威や名誉に媚びることなく、ただ面白くてワクワクする映画を作り続ける彼が大好きだった。映画とは見せ物。映画とはエンタテインメント。映画史に残らなくても、観客が「あ〜、面白かった」と言ってくれるその一言が最高の栄誉だという彼のスタンスに大いに共感したものである。ところが1993年、ロシア系ユダヤ人である自らのルーツに挑戦するかのように「シンドラーのリスト」という社会派ヒューマンドラマを製作。ついにアカデミー作品賞、監督賞を受賞した。授賞式で彼は「突っ張っていたが本当はこの賞が欲しくてたまらなかった」とスピーチをした。僕はそれを聞いて、かつて「映画にはいい映画と悪い映画の区別はない。あるのは面白い映画か面白くない映画かのどちらかだ」と言った彼の言葉を思い出した。名誉ほしさのあまり、芸術的評価の高い社会派ドラマを賞狙いであえて作ったというのなら、彼もなかなかあざといではないか。では、今まで彼の超面白映画を支持してきたファンは置き去りか・・・・?
 確かにそういう面もあったかも知れないが、彼のその後の作品群を見ると、決してそうではない事がわかる。CGの新しい地平を開いた「ジュラシック・パーク」や「宇宙戦争」といった娯楽作から、戦争映画のスタンダードとなった「プライベート・ライアン」や社会派サスペンス「ミュンヘン」、そして軽いタッチでありながら心温まる「ターミナル」や「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」(この邦題、何とかならなかったのか!?)まで、要するに彼は硬軟問わず、「映画の面白さを通じて、観客に何かを訴えようとしている映画の伝道師」なのである。

やっぱりスピルバーグでなくては!
そんな彼の最新作が「インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国」だ。これぞまさに冒険活劇エンタテインメントの傑作!とにかくワクワクして面白い。映画の楽しみ方としてはこれ以上に何を望めばいいのかという感じである。彼の作品すべてを封切りの劇場で見てきた僕としては、これからも妙に深刻ぶったり大上段に構えたりせず、今までと同じようにエンタテインメント性とヒューマニズムを根底にすえた良質の「娯楽作品」を作り続けていってほしいと思うのみである。多分、そのファンの要望を一番よく知っているのは彼自身のはずだ。
 スピルバーグの新作をリアルタイムで楽しめる時代。それは世界の映画ファンにとって、このうえもなく幸せな時代である事に間違いがないのだから。

インディ・ジョーンズ レイダース 失われたアーク《聖櫃》
インディ・ジョーンズ レイダース 失われたアーク《聖櫃》

インディ・ジョーンズ 最後の聖戦
インディ・ジョーンズ 最後の聖戦


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