日本の塩は、揚浜式塩田、入浜式塩田、流下式塩田などの塩田でつくられていた。だが、イオン交換膜製造が開発されて、昭和四十七年に塩田は姿を消した。その際、全国七社(現在は六社)だけが国内で製塩を行うことになった。六世紀半ばには塩田があった瀬戸内海には、香川県坂出市にそのうちの一社がある。また、明治三十八年からとられていた専売制が平成九年に廃止されたことにより、四国のあちこちで地域色を活かした塩もつくられ始めている。
太平洋に面した佐賀町、その海沿いには天日塩をつくる三つの業者がある。そのうち最も古い「いのちと塩の会」は、自然保護運動の一環として1982年から太陽と風の力による塩づくりを始めた。まずは太平洋から汲み上げた海水を高さ6mの櫓に張り巡らしたネットに噴霧。下に落ちた水を何度も上から噴霧する。一ヵ月ほど繰り返して、海水の5〜6倍の濃度のかん水をつくる。これをビニールハウスのような結晶ハウスに入れて、お日様の力だけで水分を乾燥させる。乾燥には夏は10日、冬は1ヵ月以上かかる。食用のほか自然派入浴塩「ぽっかり」も好評。
四万十川のほとり、大正町の山間にある「塩の邑」は、森澤宏夫さんが奥さんと二人三脚で切り盛りしている製塩所。山の中にある2棟のビニールハウス、手前では張り巡らした竹箒にシャワーのように海水が降り注いでいる。奥にはガラスの結晶皿が並んでいる。この光景は佐賀町の「いのちの塩の会」でも見た。もっとも佐賀より随分と小規模だが。それもそのはず、森澤さんは以前「いのち…」で塩づくりしていた。方式は同じだが、山中であるが故、塩害を慮りハウスでつくり、使う道具も自然のものを使いたいということで、ネット式ならぬ竹箒でかん水をつくっているのが違いだ。
昨今の塩ブームは、この「伯方の塩」から始まった。工場では海外から輸入した天日海水塩を瀬戸内海の海水で溶かして異物を取り除くと同時にかん水をつくり、それを煮詰めて結晶させ、水を切って竹の上で自然乾燥させる。苦汁を程良く残した粗塩、粗塩を煎った焼塩、塩水が蒸発して結晶する時に最初に浮かび上がるフルール・ド・セル(塩の花)などの商品がある。大三島工場は見学が可能。ロビーには伯方の塩をつかった二次製品が展示販売されており、味噌やラーメン、菓子などその種類の多さが人気をうかがわせる。
国の製塩許可を得て、塩田製塩の流れを汲むイオン交換膜製塩を手がける企業(全国6社のうちの1社)。広大な敷地では、JTで販売される食塩などを製造。その一方で、讃岐工場では、流下式塩田の手法でつくるノスタルジックな塩「瀬讃の塩」の製造も。塩飽諸島沖の天然海水を汲み上げ、濾過した後に小石を敷き詰めた板の上を繰り返し流す。太陽と光と風の力で塩分濃度を高めたら、平釜でぐつぐつと煮詰める。最後に苦汁を抜いたら完成。甘くほろ苦い、昔味の塩として人気は高まっている。
高知県幡多郡佐賀町佐賀34 TEL 0894-55-3402 太平洋の海水をポンプで汲み上げ、丁寧に濃縮させて太陽光で水分を蒸発させて結晶化する。そんな自然の恵みを最大限に取り入れた製法で作る塩。
高知県幡多郡大正町上岡95 TEL 0880-26-0369 塩の邑の土佐の山塩小僧は塩の結晶をへらで混ぜる重労働があるからこそのまろやかな味わいだ。手作業のため年間少量しかとることができない。近隣の道の駅で販売しているほか、通販もあり。
土佐の山塩小僧 240g:500円
愛媛県今治市大三島町台32 TEL 0897-82-0660 全国ブランドとなった伯方の塩。大三島工場では工場見学もOK。商品は大三島工場で販売しているほか、全国のスーパーなどで手に入る http://www.hakatanoshio.co.jp/
塩の花フルール・ド・セル 200g:200円 伯方の塩(粗塩)500g:180円
香川県坂出市大屋冨町1793番地3 TEL 0877-47-0111 大手製塩メーカー。讃岐工場で作る「瀬讃の鹽」は、昔ながらの製法で職人が丹誠込めて炊き上げた塩。海水中のミネラルを豊富に含んでいる。 http://www.nihonkaisui.co.jp/index.html
瀬讃の鹽 250g:525円 瀬讃の鹽 500g:840円