調味料の旅、番外編はソースやケチャップ、マヨネーズなど、 日本人にとっては比較的新しい、でも今やなくてはならない存在。 それもありきたりの商品ではなく、ちょっと謎を秘めた品々を探してみた。

誰にも真似ができないプロセスで生み出される神果卵に、天然素材を加えてつくったマヨネーズは、まさに「たったひとつ」しかない。四万十・自給農の里

そのマヨネーズを初めて見たのは、清流四万十川に沿う町にある道の駅。たったひとつのマヨネーズ ユニークな名前に惹かれて、物は試しと買い込んだ。その味にはちょっとやられた。ひとことで言うと、味が丸いのだ。仕掛け人は、四万十川の源流にほど近い山の中にいた。高橋敏仁さん。飄々とした人物だが、この地に移住してくる前は東京の大手広告代理店に勤務。コピーライターとして活躍していた。「仕事で食品を手がける機会が多かったのですが、いろいろと情報を集めるうちに食品添加物のことが気になり始めた。その多くは添加する必要のない物であることに気付いた。すると加工食品が食べられなくなったんです」と高橋さん。雑誌で「不耕起の米づくり(田んぼを耕さず籾を直まきする農法)」の参加者募集の記事を目にした彼は、会社を辞して、奈良県の自然農法講座に参加。その後は茨城県で不耕起による古代米づくり、養鶏などを手がけた。そして平成十一年、高知県東津野村に移り住み、「四万十・自給農の里」をつくった。自宅兼事務所は、廃屋となっていた築百二十年の茅葺きの家。奥様や研修生とともに農薬をつかわない有機栽培による米と野菜づくり、そして養鶏に取り組んでいる。
 

マヨネーズの原料となる神果卵は、茅葺き屋根の家の前にある小屋にいる鶏たちが生み出す。鶏は日本の品種でモミジ。鶏舎の地面は剥き出しの土。鶏たちは屋根付きの部屋と屋根のない部屋を自由に行き来している。逃げ出したり、外敵に襲われたら困るから囲いをしてはいるが、鶏たちは実にのんびりと元気に育っている。神果卵の流通価格は一個三百円。最初は値段を聞いて驚いたが、その飼育方法を聞いて納得。
 まず餌、というよりも鶏の御飯が違うのだ。ポストハーベスト農薬不使用で非遺伝子組み換えのトウモロコシ、特殊酵素で発酵させた国産丸大豆、純天然の特殊鉱石、薬草と野草、沖縄産のにがり塩、有機野菜、永田農法の米糠、納豆菌。飲み水にはラカンカとアロエベラ(ともに活性酸素を無毒化する成分を多く含んだ植物)のエキス、土佐沖の天然魚の魚粉、高波動セラミック各種を混ぜ込んでいる。さらに与えるのが「山の神様」。これは近隣の急勾配の傾斜地から集めた広葉樹の落ち葉や腐葉土を米糠、四万十の清流水と合わせて三年間、熟成・発酵させたものだ。これだけでも大変なコストがかかっており、一個三百円でもペイできない。市場価格を慮ってギリギリのライン。「日本一安全な卵」を目指す高橋さんの想いあってこそできることだ。最近はこの卵がマスメディアに取り上げられる機会が増え、人気番組の『特選素材』にもなった。また、料理の鉄人・坂井シェフのフレンチレストラン「ビストロ・パラザ」をはじめ有名料理店からの引き合いも増えている。清流のほとりの小さな農園は、俄に注目を集め始めている。
 ちなみにモミジの「家」の向かい側には、南米チリ原産の地鶏アローカナの「家」があった。この鶏の産む卵はブルーの殻に包まれている。こちらの卵は一個百四十五円也。

「たったひとつのマヨネーズ」は、神果卵を二個、圧搾一番搾り菜種油、林檎酢、純米酢、種子島の洗双糠、天塩をつかってつくられる。マヨネーズの製造を担うのは、高知県大豊町にある梶ヶ森マヨネーズ工房(144頁で紹介している「はぴーナチュレ」の製造工房)。四万十川の源流で生まれた卵は、吉野川の源流の町(大豊町)でマヨネーズになり、四万十川の村に帰ってくる。茅葺きの住まいの座敷では、高橋さんの奥様が卵や「たったひとつの…」の箱詰め作業をしている。その手を休めてつくってくださった神果卵の温泉卵は、濃厚で純粋な味わい。何も付けなくても、卵の持つ滋味で充分に堪能できる。そう告げると高橋さんの顔がほころんだ。「実は…近々もっと広い場所に引っ越しをするんです。同じ四万十川のほとりの窪川町なんですが、馬を飼ったり、果樹園をつくったり。そばには渓流が流れていて、水車もつくって。みんなに遊びに来て貰える場所にしたいんですよ」。新天地はモミジとアローカナにとっても楽園となるだろう。

四万十・自給農の里

高知県高岡郡東津野村北川2316
TEL 0889-62-3563
鶏のエサや水、環境など飼育方法にこだわった卵、神果卵から作られたマヨネーズ。ほかの素材にもこだわり、とろけるような味わい。注文は直接「四万十・自給農の里」高橋さんへ。FAX(電話と同じ)で受け付けている。

たったひとつのマヨネーズ300g:550円
 
掲載日:2007年11月6日