農家レストランで いただきます。ごちそうさま。

第1回 ゴトゴト、水車が回る里で
住民の手で始まった村おこし
石畳の宿

里を囲む深い山。その斜面に沿うように棚田や煙草畑が点在する石畳の集落。山裾を縫うように流れる清流のほとりには、平成6年に開業した町営の「石畳の宿」がある。建築から80年以上も経った古い農家を移築したという建物は、そのまま「日本昔ばなし」から抜け出たようだ。
石畳地区で「村おこし」が始まったのは昭和63年。集落に住む10数名が、「石畳を思う会」を結成したことがきっかけだ。まず、思う会が取り組んだのは、かつて集落にはたくさんあった水車小屋の復元。自前、手作りの活動は、マスコミからも注目を集め、小さな山里に足を運ぶ人が徐々に増えてきた。その機運にのって整備されたのが、宿泊は1日4組までという小さな公共の宿「石畳の宿」だ。運営にあたっているのは、地元の主婦で結成したエプロン会のメンバーたち。当初は10人ほどでスタートしたが、「介護があったり、孫の世話話があったり」で、多少顔ぶれが入れ替わり、現在のメンバーは6人。30代から60代までが交替で、和気あいあいと料理に、もてなしに主婦のキャリアを生かしている。
その日の当番の山本淳美さんと大木初枝さんは発足当時からの中心メンバーで、淳美さんは管理人さん、初枝さんは料理長。「なーんていうと偉そうやけど、肩書きはあくまでも便宜上。今は煙草の収穫の時期だから、煙草農家の人は家業に忙しくて出て来れないけど、その辺はみんなで相談しもってやりくりしとるんよ」と初枝さん。淳美さんも「私たちのモットーは、無理をせんように。長いこと続けるには家族の理解が大事。気持ちよく送り出してもらわんといかんから」と話す。

お花の天婦羅
囲炉裏と料理

その日の献立は、稲木にかけて天日乾燥したお米で作ったばら寿司、山芋の酢もの。地元では鬼辛子と呼ばれる酢みそで味わうのは、仲間の一人が手作りした蒟蒻、からっと揚げた豆腐、それから湯がいた人参。肉厚の椎茸や蕗、南瓜が彩りよく盛りつけられたお煮染めは、「一つひとつ別々に炊いたんよ。それぞれ出汁やお味付けを変えるから、手間はすごくかかってる!」という自慢の一皿だ。これに囲炉裏でじっくりと焼いたアメノウオや白和え、竹の器に入ったうどん(これはこの地の流儀で、大豆出汁で頂く)などが付くが、やっぱり目をひくのは竹の笊に奇麗に並んだ天婦羅。マリーゴールドにハルジオン、バラの花びら、ハコベ、クチナシの花、ひよこ草、ミント、枇杷の新葉と実、ヨモギ、ユキノシタ、赤紫蘇、宵待草、柿の葉、獅子唐、グラジオラスの花、ウド、ワラビ、ドクダミ。どれも町中の料理屋さんでは食べられないものばかり。さっそく、お花の天婦羅に箸をのばしたバラの花びらはほんのり甘く、口の中に淡い香気を残す。グラジオラスは甘さの中にほどよい苦みがあり、後口はさっぱり。「美味しい!」と思わず感嘆の声をあげたら、初枝料理長は満面の笑顔で「私、お花が咲いても奇麗やなっていうより、よし、これを料理に使おうって思っちゃう。お花もそうやけど、野菜も山菜も石畳のもんばっかり。『あそこの畑にあれがあったな』って、いつも集落の畑に目を光らせてる(笑)。作る方にも『お客さんがこがいにいうて喜んどったよ』って報告したら励みになるみたい」と答える。ちなみに宿泊客の朝ご飯には、村おこしのきっかけとなった水車でついた水車米が供される。つやつやピカピカのお米は、とっても評判がいいそう。 囲炉裏端でお料理を頂きながら、お二人ととりとめのない話をしていたら、玄関に人の気配。その日に宿泊予約をしていたオランダからのご夫婦の到着だ。初枝さんは一枚の紙切れを手にお出迎え。その紙切れ、ひょいと覗いたら「ようこそ石畳の宿へ」とか「トイレはこちら、お風呂はこちらです」などという必要最小限の英会話をカタカナで記したアンチョコだった。 ひとしきり説明を聞いたお客様、ご主人はすぐに周辺の散策に出かけたみたい。残った奥様は縁側に座ってぼんやりと周辺の景色を眺めている。その様子を見ていると、なんて贅沢な旅なんだろう!と羨ましくなってきた。よーし、私も今度はお泊まりして、朝ご飯の水車米も食べよう…と決意した次第だ。

地図
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石畳の宿

愛媛県喜多郡内子町石畳2877
電話/0893-44-5730
1泊2食付8,085円(1室2名利用)
食事利用は7名以上で完全予約制。 1人前2,625円
駐車場あり


 
掲載日:2008年7月9日
提供:四国旅マガジン GajA