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グルメ

ユコウに愛を

「ちょうど、よかった。早く!早く!」。「キャフェ・ド・パウゼェ」につくやいなや、オーナーパティシエ杉山佳三さんの奥様・久実さんがバタバタと手招きをしている。
2009年06月03日公開

かみかついっきゅう

住所:徳島県徳島市沖浜東1-39 ウォーターフロント沖浜1階中央

「ちょうど、よかった。早く!早く!」。「キャフェ・ド・パウゼェ」につくやいなや、オーナーパティシエ杉山佳三さんの奥様・久実さんがバタバタと手招きをしている。約束の時間ぴったりに訪ねたのになぜ?と訝しく思いながら近づいていくと、久実さんの隣には小柄なご婦人がいた。新居百栄さん。勝浦郡上勝町で「ユコウ(柚香)」の栽培をしている生産者だ。ユコウとは聞き慣れない名だが、徳島県と高知県、愛媛県のごく一部で栽培されている柑橘。ユコウは不思議な果実で、どこでも栽培できるものではない。上勝町は昔からユコウの数少ない栽培地の一つとして知られており、地元の方々はスダチのように果汁を搾ってポン酢にしたり、果皮を砂糖や醤油で炊いてつくだ煮にしたりしている。新居さんも参加している町おこしのためにつくった第三セクター「かみかついっきゅう」では、ユコウのマーマレードなどを販売しているが、知名度は非常に低い。「そのユコウを、この店のオーナーが気に入ってくださって、ずっと使って頂いているんです。私はユコウがどんなお菓子になっているか見たくって、今日は仲間と一緒にお店にお邪魔したんですよ」と新居さん。ご自身が育てたユコウが、洒落たフランス菓子に変身しているのを見て、オドロキと喜びいっぱいの様子だ。

生ケーキ、焼き菓子、ソルベ、パンなど商品は多彩

生ケーキ、焼き菓子、ソルベ、パンなど商品は多彩


フランス菓子とユコウ

神戸で洋菓子の修業をした佳三さんは、フランスに旅行に出かけた際、自分が学んだ「日本の洋菓子」とフランス菓子の違いに愕然とする。どっちがいい、どっちが正しいではなく、佳三さんはフランス菓子に魂を揺さぶられたのだ。それからは機会を見つけてはフランス菓子の名店で講習を受け、独学で研究を進めた。素材の多くも本場の流儀に習っていたが、ある時、たまたま口にしたユコウの味に衝撃を受ける。香りも味も、ほかの柑橘と比べ物にならないくらい強く、その味はスペイン産のレモンに似ていた。「ユコウを活かしたフランス菓子をつくりたい」との思いを募らせた佳三さんは、一心にユコウの菓子づくりに取り組んだ。

「ユコウはまったくと言っていいほど知名度がないので、出荷しても高く売れないんです。生産者の方は『それならユズにしよう』とユコウの栽培をやめてしまう。それを何とかしたい、まず地元の人にユコウを知ってもらいたいと思ったんです」と佳三さん。マカロン、パウンドケーキ、パート・ド・フリュイ、ソルベなどユコウのお菓子を店の定番とした。

飲み物と一緒にスイーツが味わえる

飲み物と一緒にスイーツが味わえる


太陽を濃縮した果実

「ユコウの味を知るなら、まずこれを食べてみて」と久実さんが差し出してくれたのは、薄くスライスしたパンにのせたユコウのコンフィチュール。口元に近づけると、強い柑橘の香り。その味わいは甘さも酸味も、今まで食べたどの柑橘より強く、それでいて素朴。お日様の光を濃縮したような、懐かしさを秘めた不思議な味だ。「ウチでは地元産のフルーツをつかったコンフィチュールを何種類かつくっていますが、お客様には試食をおすすめしているんです。このユコウのコンフィチュールを食べたお客様はみんな驚くんですよ。これ何?食べたことのない味だ・・・って」と久実さん。彼女はちょっぴり無口な佳三さんに代わって、いろんなお話を聞かせてくれた。佳三さんのフランス菓子への憧憬、ユコウへの愛情、お客様への思い。もちろん一般のお客様はそんな話を聞く機会はないだろうけれど、佳三さんのお菓子があれば大丈夫。なぜならその味わいが、何より雄弁につくり手の思いを伝えてくれるから。(提供:四国旅マガジン GajA)

コンフィチュール 1ビン 714円

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